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15. 漢方復興の大恩人(5)


 前回に紹介した奥田謙蔵先生の一番弟子として、和田正系(まさつぐ)先生がおられます。先生はまた、漢方復興の大恩人である和田啓十郎先生のご長男でもあった方です。
 和田啓十郎先生は45才でその尊い生涯を閉じられましたが、その当時まだ17才であった和田正系先生を毎朝枕頭に呼ばれて、没後の心得注意を与え、また、自ら経験された一生の漢方治療の核心を口述筆記せしめ、平生の信念に基き自ら自己の病を治療し、死に至るまで変らなかったそうです。誠に見事な最後のお姿が目に見えるようです。
 和田正系先生は千葉大学医学部を卒業されて、奥田謙蔵先生に師事されましたが、奥田先生は和田先生を弟子というより、真に信頼し得る弟として対応されていたように感じられます。
 和田正系先生は奥田謙蔵先生の『皇漢医学要方解説』を主軸にして、更に自己の経験と多くの先輩の経験を参照して、先生独自の新しい工夫を加えて、『漢方治療提要』という、正統的な格調の高い漢方の近代的な教科書を作られました。この本があったればこそ、筆者(遠田)は「漢方近代化」の道を開拓していくことが出来ましたので、「近代漢方」にとっては、この本は根本的に重要な本ということになります。
 和田正系先生は千葉大学生理学教室で講師を務められましたが、千葉大学での漢方の発展のみならず、日本全体の漢方の発展にも尽力されました。特別なお弟子さんは持たず、晩年は縁ある方々のみを診療されて、昭和54年7月15日、館山市の某病院において永眠されました。享年は79才でした。御葬儀も生前のご主張通り、一切の香典も供え物も断られ、極めて質素に執り行われました。なんとさわやかな、清らかなことでしょう。
 和田正系先生は、まさしくお名前通り、漢方復興の大恩人、和田啓十郎先生の御遺志を正しく受けつぐ生涯をおくられた方でした。
 その他の様々な事柄について、より深く知りたい方々は、どうぞ拙著『近代漢方:総論』(医道の日本社、1998年)をご参照下さい。

(遠田裕政)