以前のトピックス

21. 思考停止


 今年は冬の訪れが早く、11月は寒い日が多かったです。そのせいか紅葉は見事だったという声も聞きます。
 現実に目を戻しても寒いニュースが目に付く年の瀬です。いつまでたっても回復しない景気、業績悪化と銀行の貸し渋りによる会社倒産の増加、北朝鮮問題、現実味をおびてきた対イラク戦争。
 日本の景気は世界の経済動向に連動した事柄ではありますが、また政治の結果でもあります。改革を旗印に国民の圧倒的支持を得て登場した小泉政権ですが、改革はかけ声ばかりで、目に見える成果は少なく、経済は一向に好転しないばかりか底なしのデフレに陥ってしまったかのようで、こと経済に関しては完全に失政といわざるを得ません。
 特殊法人問題など国民が最も是正して欲しい問題は完全に骨抜きにされた形で決着してしまった一方、医療保険に関しては初めての診療報酬マイナス改訂という形で実を結び?ました。また老人医療費患者負担分はかなりの程度までアップさせられました(年金暮らしの父はぼやいています)。医療費を削減するのは改革の一環として良いことと捉えられる方も多いでしょう。確かに健康保険制度は財政的には破たん寸前ですから、何らかの対策は必要です。しかし、現在の日本の医療保険制度を破壊してしまって良いかというと、もう一度よく考えてみる必要があります。
 日本のGDPに対する医療支出の割合(7%)は先進国の中では高い方ではありません(下図参照、ピンク線が日本)。米国では13%を超えています。また医療は単なる消費ではなく、産業でもあり雇用促進、産業育成の手段でもある側面を忘れてはいけません。

医療支出総額の割合(対GDP)

 日本では優れた国民皆保険制度のおかげで、誰でも自由に医療機関を選び受診(フリーアクセス)することができますが、諸外国では必ずしもそうではありません。米国で高度の医療を受けるにはかなりの所得を必要とします。英国では決められた病院に行かなければならない上、手術が必要になっても半年待ちなどという笑って済ませられない話を聞きます。
 比較的低い医療費で世界一の長寿国になっている事実も、国民はもう少し評価すべきではないでしょうか(WHOの評価ではトップです)。もちろん一国の平均寿命を規定する要因は複雑でしょうが、医療制度は大きな要因のはずです。
 平和、人権、愛、平等、ゆとり教育etc.、聞いたとたんにホワ〜ンと思考停止に陥ってしまう言葉があります。改革もそうした言葉のひとつです。改革が改良でなく改悪になる場合も多いことを頭において、偏向したマスコミの論調に踊らされることなく、もう一度医療保険制度改革について考える必要があると思います。

(雨宮修二)