以前のトピックス

27. 医療:その5
 前回(25)は、東洋医学の良い点を幾つか考察して、しかも、それでも、それらが東洋医学の存在価値を主張するものとしては、今一であることを指摘し、終了しました。
 当院では、現代医療でどうしても治らなかった「慢性湿疹」の方々がよく来院されますし、「証」にあわせた漢方薬と本人の改善への努力とによって、結構よく治っていくものですが、そういう時、しばしば感じることは、現代医学の治療があまりにも一時的なものでありすぎるという事です。局所の皮疹の一時的な改善はステロイド軟膏を使用して達成されるのですが、その他の部位に次々と皮疹が出てきて、それを抑えるために軟膏を次々に塗っていくだけであり、そういう皮疹が出てくるような「体質」を改善していく治療、すなわち、生体の全体が良くなりながら、その局所の異常状態(皮疹)も改善していくような「全体治療」というものが全くないのです。
 ある患者さんは、現代医学の皮膚科のこういう治療を「いたちごっこ」と表現しましたが、まさにその通りだと思います。結局、患者さんは次々と医者を代えて、どこへ行っても同じような治療を受けて治らず、やがて、様々な「代替医療」に望みを託し、時には大金を浪費するようなことにもなるようです。これは一般的に言って、個々の皮膚科の先生が悪いわけではないのです。現代医学の皮膚科学そのものの発展段階がまだそのようなものであるからなのです。
 この「いたちごっこ治療」は何も現代医学のみに限りません。東洋医学と称していても、必ずしもすべて「全体治療」が出来るとは限りません。いやむしろ、出来ない人の方が多いのです。東洋医学そのものはまだ学術化され、統一化されていません。そのため、個々の治療者の治療能力の差はまさにピンからキリまであることになり、その治療形式も誠に千差万別です。学術化され、統一化されている現代医学に比べて、その混乱の度合はあまりにも大きくて、心配でもあるのです。
 東洋医学が西洋医学に断然と優る点はその「全体治療」にあることを本当に自覚し、実践していく人達こそ、本当の意味での、東洋医学の実践者なのです。
 また、ここに目をつけることが、東洋医学関連の良い治療者を見つけ出す「コツ」の一つでもあるのです。

(遠田裕政)