以前のトピックス

32. 医療ドラマ

  お茶の間ではリメイクされた「白い巨塔」が話題のようです。医療に関係のない方には、財前に感情移入するだけでなく、たぶん大学の医局の実態を覗き見るような楽しみもあって人気なのでしょうが、いわゆる大名行列をはじめ医療関係者には、それは違うという人が多いのではないでしょうか。
  そもそもこの小説が発表された1965年と今では医療をとりまく環境がガラリと変わっています。教授を頂点とする医局制ヒエラルキーも、その弊害が強く批判され、今や医局制を解体した大学さえあります。来年度から導入される新医師臨床研修制度では、卒後すぐに医局に所属するのではなく、最低2年間は、広くプライマリーケアを学ぶことが義務づけられました(以前の卒後研修は努力目標でした)。インターン制度が廃止されてから38年振りの大変革です。山崎豊子の小説がちょうど同じ頃に発表されているのは偶然ではないでしょう。学生運動は当時の医学部の医局のあり方を強く批判し、インターン制度廃止につながりました。山崎豊子の小説もこうした時代背景の元で読まれるべきものだと思います。いや、名作とは時代を越えて読み継がれるものならば、「白い巨塔」は名作なのかもしれませんが、ドラマにリメイクするならば、もう少し現代の視点を入れて欲しかったと思うのは欲張りでしょうか。
  新医師臨床研修制度では、研修医の処遇改善も大きな眼目です。日本の優れた皆保険制度は、研修医の無休無給に近い過酷なハードワークに依存していた部分が多いことは、意外に気づかれていない事実です。この大きな変革に、十分な予算措置がとられることを願って止みません。
  「ER」「救急病棟24時」「Dr.コトー診療所」、そして「白い巨塔」、医療ドラマは視聴率の高いジャンルなのでしょうが、時には眉に唾する事も忘れずに!

(雨宮修二)