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甘麦大棗湯の不思議
甘麦大棗湯は甘草、小麦、大棗の3味からなる非常に単純な漢方薬です。強い鎮静作用があり、不安感の強い場合に大変よく効く処方です。先日も不安感が強く、いてもたってもいられない中年の女性にこの薬を頓服として処方したところ、1週間後には晴れ晴れした顔で来院し「あの薬は大変良く効きました。できれば1日3回飲ませてください。」といわれました。この方に限らず、外れのない薬として私は頻用しています。
この3味からなる単純な漢方薬のどこにそんな力があるのか、誰しも不思議に思います。甘草、大棗は多くの漢方薬に含まれているありふれた生薬ですし、小麦は使われることの少ない生薬ですが、何といっても小麦です。この薬を処方すると皆さん甘くて飲みやすいとおっしゃいます。甘草も大棗も甘味のある生薬ですので、小麦が入ったとてかなり甘味が前面に出た処方です。甘味は人を幸福にする味覚といわれています。この甘味こそ甘麦大棗湯の面目ではないでしょうか。不安で落ち着かない時、人は甘味を求めるのでしょう。
14gも入っている小麦の作用は何なのかわかりませんが、小麦の含まれている厚朴麻黄湯には鎮静作用があまりないことから、小麦に特に鎮静作用がある訳でもなさそうです。しかし甘草と大棗の入った大多数の処方にはもちろん鎮静作用がないことから、甘草と大棗だけではだめで、甘草、小麦、大棗の3味が合わさって初めて鎮静作用が出現するようです。不思議ですね。
西洋薬の安定剤と違って甘麦大棗湯では眠気はおきません。一度使ってみるとその効果の確かさに驚き再び使ってみたくなる薬です。本当に甘麦大棗湯は不思議な薬です。
(雨宮修二)
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