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フードファディズム

「あるある」の納豆ダイエット捏造事件では苦い思いをした人も多いのではないかと思います。私は「あるある」の捏造に驚きはしませんでしたが、スーパーの棚にまったく納豆がないのを見るとさすがに異様な光景だと感じました。

「フードファディズム(food faddism)」という言葉があります。Wikipediaでは、フードファディズムとは、「特定の食品を食べるだけですっかり健康になる、などという宣伝をそのまま信じ、バランスを欠いた偏執的な食生活をすること。あるいは、特定の食品を口に入れて病気になったなどの情報に接し、その具体的な量に関するデータも確認しないまま、それを感情的に漠然と記憶し、その食品を全く口にせず、バランスを欠いた偏執的な食生活をすること。」と明快に説明されています。さらにフードファディズムの背景として「今よりさらに健康になりたいという人々の思い、健康ブームが根底にある、とも言われる。ただし、その思いが、適切なレベルを越え半ば強迫観念化している場合があり、その強迫観念は、健康関連商品・サービスによって利益を得ている企業(マスメディア含む)の流す恣意的な情報によって生じている場合がある。」と大変納得できる説明がなされています。

漢方にも、薬は毒であり病気も毒である。毒をもって毒を制すのが治療であるとする考え方と、世の中には不老不死をもたらす物質があり、そうした薬/食品を摂取することによって健康を保つとする考え方があります。これは薬膳や健康食品などにつながる考え方です。前者は西洋医学に近い考え方で、後者は予防医学的な考え方ともいえます。前者は治療を誤れば患者は悪くなる訳で、治療の成否が目に見えやすいのに対し、後者は治療の効果が非常に長い時間をおいてからはじめて顕れてくるものなので、薬の有効性の評価が難しい欠点があります。泰の始皇帝が不老不死の薬として毒物(水銀という説がある)を摂取していたのは有名な話です。不老不死薬の探求は究極のフードファディズムといえます。

「あるある」以外にも健康バラエティー番組はたくさんあり、番組で紹介された商品がたちまち品薄になる現象は今も続いています。こうした状況は、役にもたたない食品を摂らされる消費者にも、一時的に需要が増えまたすぐに元にもどってしまう需給のジェットコースターに振り回されるメーカーにも、不幸なことです。唯一利益があるのは視聴率をかせげるTV局ですが、それも納豆ダイエットのような焼けどをしない範囲においてでしょう。

恣意的な情報に躍らされ、フードファディズムに陥らないためには、食品とはまず体を養うエネルギーであって、必要な栄養素をバランス良く過不足なく摂るのが良いという食事の基本に今一度立ち返る必要があります。そして「これだけを摂れば健康になれる」といった夢の食品はないという真実を肝に銘じて認識すべきです。その上でメーカー、マスメディアの利害に思いを致せば、健康番組の人気司会者が「これさえ食べていれば大丈夫!」といかに雄弁に唱えても、その文言は虚しく聞こえてくるはずですが。

(雨宮修二)